2026.10.04 / FOOD & SCIENCE

オリーブ油は、本当に体にいいのか

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オリーブ油は「地中海食の主役」「健康にいい油」と言われることが多い。

では、人間を対象にした研究では、どこまで確認されているのか。

結論から言うと、最も根拠が強いのは心血管疾患の予防だ。ただし、その根拠を読むときには、次の3つを区別する必要がある。

この3つを混ぜると、「オリーブ油さえ摂れば健康になる」という誤読になる。

目次

最も強い根拠は、地中海食のRCT

最大の根拠は、スペインで行われたPREDIMED試験だ。心血管疾患のリスクが高い7,447人を3群に分けた。

群内容
地中海食+エキストラバージンオリーブ油(EVOO)EVOOを無料で配布
地中海食+ミックスナッツナッツを無料で配布
対照群脂肪を減らす指導

結果は、主要な心血管イベント(心筋梗塞・脳卒中・心血管死)のハザード比が、EVOO群で0.69(95%CI 0.53~0.91)、ナッツ群で0.72(0.54~0.95)だった [1]。なお、2013年に発表された最初の論文は、方法上の問題を受けて再解析され、2018年に再発表されている [1]。

ここで重要なのは、これがオリーブ油単体の試験ではないことだ。野菜、豆、魚などを増やす地中海食全体への介入であり、「オリーブ油だけの効果」は切り出せない。それでも、オリーブ油を中心とした食事パターンが、薬ではなく食事の変更で、イベントを減らす可能性を示した大規模RCTとして、価値は大きい。

米国の大規模コホートでも、関連が見られた

地中海の人々だけの話ではないのか。この疑問に答えたのが、ハーバード大学の研究グループによる米国の2つのコホート研究だ。

研究対象1日7g超(大さじ約半分)の摂取群
心血管リスク(2020)米国の成人、約24年追跡心血管疾患リスクが14%低下、冠動脈疾患リスクが18%低下。脳卒中は有意な関連なし [2]
死亡リスク(2022)米国の成人、約9.2万人心血管死が19%、がん死が17%、神経変性疾患死が29%、呼吸器疾患死が18%低い [3]

ただし、いずれも観察研究だ。オリーブ油を多く摂る人は、ほかの生活習慣も違う可能性がある。研究側は主な食事・生活要因を調整しているが、因果関係までは言えない。

また、最も多い群(1日7g超)に入った人は、研究開始時点で全体の約5%にすぎなかった [3]。

「置き換え」が最も実用的な視点

2020年の研究で、特に注目したいのは置き換えの解析だ。

つまり、オリーブ油の強みは、「ほかの植物油より優れている」ことよりも、「動物性脂肪や加工脂肪の代わりに使える」ことのほうにある。

「脳にいい」は、まだ観察研究の段階

2024年には、同じコホートを使った認知症に関する研究が発表された。約9.2万人を28年間追跡した結果、1日7g超のオリーブ油を摂る人は、ほとんど摂らない人より、認知症による死亡リスクが28%低かった(調整後ハザード比0.72)[4]。食事の質の高低にかかわらず、同じ傾向が見られた [4]。

ただし、結果は「認知症の発症」ではなく「認知症を死因とする死亡」であり、観察研究なので「オリーブ油が認知症を防ぐ」とは言えない。置き換えの解析で有意だったのは、マーガリンとマヨネーズからの置き換え(8~14%低下)で、バターやほかの植物油からの置き換えでは有意ではなかった [4]。

EVOOと精製オリーブ油は、同じなのか

エキストラバージンオリーブ油(EVOO)は、ポリフェノールを多く含むとされる。では、効果はEVOOに特有なのか。

米国のコホート研究では、EVOOか通常のオリーブ油かを区別して解析できなかった [2]。PREDIMEDの参加者データを観察研究として分析した報告では、EVOOの摂取量が最も多い群で、心血管疾患リスクが39%低かったとされている [5]。ただし、これも試験の割り付けではなく、参加者の摂取量にもとづく観察的な解析だ。

したがって現時点では、「EVOOのほうが有利な可能性はあるが、精製オリーブ油との差を断定するには根拠が足りない」と整理するのが正確だ。

買うときにラベルのどこを見るかは、オリーブオイルの選び方に書いた。

加熱しても大丈夫か

「オリーブ油は発煙点が低いので、加熱に向かない」という説明もよく聞く。

2018年に、10種類の食用油を加熱して比較した実験室研究が報告された。EVOOは、高温(180℃で長時間)でも、有害とされる極性化合物の生成が最も少ない部類で、キャノーラ油などの精製された種子油は、生成量が多かった [6]。発煙点の高さと、加熱時の安定性は、必ずしも一致しなかった。

ただし、この研究には限界がある。

だから、「EVOOは加熱調理に向かない」という説明は、少なくとも根拠が弱い。一方で、「揚げ物に使っても健康にいい」とまでは言えない。

どれくらい食べればいい?

最適量を断定することはできない。研究で使われた量は、次のとおりだ。

研究量
米国コホート [2][3][4]1日7g超(大さじ約半分)で、リスク低下との関連
PREDIMED(EVOO群)[1]週約1リットルのEVOOが配布され、1日4大さじ(約50mL)以上の使用が推奨された

PREDIMEDの量は、日本の食生活から見ると多い。また、油は1gあたり約9kcalと高エネルギーだ。大さじ1杯で約120kcalになる。「たくさん摂るほど健康になる」と考えるのは危険だ。

現実的には、バターやマーガリン、マヨネーズなどを使っている場面を、オリーブ油に置き換えるという使い方が、最も研究に沿っている。

結局、オリーブ油の何がすごいのか

エビデンスの強さ項目
比較的強い地中海食+EVOOによる心血管イベントの減少(RCT) [1]
観察研究で関連あり心血管疾患・冠動脈疾患、死亡リスク [2][3]、認知症死亡 [4]
まだ不確かオリーブ油単独の因果、EVOOと精製油の差、ほかの植物油より優れるか、加熱調理での長期的な影響

オリーブ油は、「飲めば健康になる魔法の油」ではない。

それでも注目に値するのは、バターやマーガリンといった脂を、オリーブ油に置き換えるという日常の小さな選択が、大規模な研究でリスクの低さと関連していることだ。

まとめ

オリーブ油についての情報には、健康効果を強調するものが多い。しかし、論文を見ると、もう少し地味で、もう少し実用的だ。

心血管疾患については、地中海食のRCTと米国の大規模コホートが、同じ方向を示している。認知症や死亡リスクについては、観察研究の段階にとどまる。そして、効果の中心は「オリーブ油そのもの」より、「何の代わりにオリーブ油を使うか」にあるかもしれない。

参考文献

1. Estruch R, et al. (2018). Primary prevention of cardiovascular disease with a Mediterranean diet supplemented with extra-virgin olive oil or nuts. The New England Journal of Medicine. doi:10.1056/NEJMoa1800389

2. Guasch-Ferré M, et al. (2020). Olive oil consumption and cardiovascular risk in U.S. adults. Journal of the American College of Cardiology. doi:10.1016/j.jacc.2020.02.036

3. Guasch-Ferré M, et al. (2022). Consumption of olive oil and risk of total and cause-specific mortality among U.S. adults. Journal of the American College of Cardiology. doi:10.1016/j.jacc.2021.10.041

4. Tessier AJ, et al. (2024). Consumption of olive oil and diet quality and risk of dementia-related death. JAMA Network Open, 7(5), e2410021.

5. Guasch-Ferré M, et al. (2014). Olive oil intake and risk of cardiovascular disease and mortality in the PREDIMED Study. BMC Medicine.

6. de Alzaa F, et al. (2018). Evaluation of chemical and physical changes in different commercial oils during heating. Acta Scientific Nutritional Health, 2(6), 2–11.

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