JOURNAL / WORK
2026.10.05

会社を「辞める」と言い出せないときに、知っておくこと

約5分で読めます(目安)

辞めると決めたのに、言い出せない。その重さの半分は、ルールを知らないことから来ている。

辞めると決めた。次の仕事の目処も立ちつつある。それなのに、上司に切り出せない。

「忙しい時期に迷惑をかける」「引き止められたらどうしよう」「怒られるかもしれない」。言い出せない理由は、たいてい気持ちの問題に見える。

でも、その重さの半分は、ルールを知らないことから来ている。退職について、法律はかなりはっきり決めている。

退職に、会社の許可はいらない

正社員のように雇用期間の定めがない場合、民法627条により、労働者はいつでも退職を申し入れることができる。そして申し入れから2週間が経つと、雇用契約は終了する。

ここで大切なのは、これが「お願い」ではなく「申し入れ」だということだ。会社が承諾しなくても、2週間が経てば契約は終わる。

就業規則に「退職は1ヶ月前までに申し出ること」と書かれている会社も多い。一般には民法の2週間ルールが優先されると考えられている。ただ、引き継ぎや人間関係を考えれば、就業規則の期間に合わせて伝えるほうが、結果的にスムーズに辞めやすい。

なお、契約社員など雇用期間が決まっている場合は、ルールが異なる。期間の途中で辞めるには、原則として「やむを得ない事由」が必要とされる。ただし、契約期間が1年を超える場合は、契約の初日から1年が過ぎれば、いつでも退職を申し出られる(労働基準法137条。一部の専門職などは除く)。まずは契約書を確認しておきたい。

退職を申し入れる → 2週間が経つ → 会社の承諾がなくても契約は終わる

「相談」ではなく「報告」として伝える

言い出しにくさの正体の一つは、伝え方にある。「辞めようか迷っていて……」と相談の形で切り出すと、話し合いの余地が生まれ、引き止めにつながりやすい。

決めているなら、「〇月〇日付で退職します」と、決定事項として伝える。最初に伝える相手は直属の上司だ。人事や同僚に先に話すと、上司との関係がこじれやすい。

伝え方の例

「お時間をいただきありがとうございます。一身上の都合により、〇月〇日をもって退職させていただきたく、ご報告に参りました。引き継ぎは責任を持って行います」

理由を細かく話す必要はない。「一身上の都合」で十分だ。不満を並べると、「それなら改善するから」という引き止めの材料になる。

引き止められたら

引き止めには、いくつかの型がある。

よくある引き止め考えておくこと
「給料を上げるから残ってほしい」辞めたい理由は給料だけだったか。辞めると言うまで上がらなかったのはなぜか
「今辞められると困る」人員の手配は会社の責任だ。引き継ぎを丁寧にすることで応える
「どこに行っても同じだ」それを判断するのは自分だ。何を変えたくて動くのかを言葉にしておく
「後任が決まるまで待ってほしい」期限のない約束はしない。退職日は先に決めて伝える

引き止められるのは、あなたが必要とされている証拠でもある。それ自体は悪いことではない。ただ、迷ったまま残ると、同じ問題がまた戻ってくる。辞める理由を自分の中で整理してから伝えれば、揺らぎにくくなる。

どうしても言えないなら、退職代行という選択肢

上司からの強い圧力がある、体調を崩していて出社できない。そういう状況なら、本人の代わりに退職の意思を伝える「退職代行」を使う人もいる。

退職代行には、運営元によって大きく3つの種類があり、できることが法律で違う。

運営元退職の意思を伝える退職日・有給などの交渉裁判の代理
民間企業○××
労働組合○○(団体交渉権による)×
弁護士○○○

弁護士でない者が報酬を得て他人の法律事務を扱うことは、弁護士法72条で禁じられている(非弁行為)。そのため民間企業の代行は「伝えること」しかできず、未払いの残業代の請求や有給休暇の交渉はできない。

伝えるだけで済むなら民間や労働組合、お金のトラブルや会社との争いが予想されるなら弁護士。状況に合わせて選ぶことが大切だ。

今日のワーク

  1. 雇用契約書と就業規則で、退職の申し出期限を確認する
  2. 退職したい日を決め、そこから逆算して伝える日を決める
  3. 伝える一文を、実際に書いておく

言い出せないのは、あなたが弱いからではない。真面目に働いてきたからだ。

ルールを知れば、退職は「許可をもらうこと」ではなく、「自分で決めること」になる。

参考文献・出典

民法(明治29年法律第89号)第627条・第628条

弁護士法(昭和24年法律第205号)第72条

マネーフォワード クラウド契約「民法627条とは」 https://biz.moneyforward.com/contract/basic/20099/

LegalOn Technologies「退職代行サービスとは」 https://www.legalontech.com/jp/media/resignation-agency

弁護士ドットコムニュース(退職代行と非弁行為) https://www.bengo4.com/c_5/n_20376/