QUIZ積立制度を「最初から加入、やめたい人だけ手続き」にしても、加入率はほとんど変わらなかった。答えを見る
×。37%から86%に上がった。
アメリカの大企業の研究。制度の中身は同じで、変えたのは「何もしなかったときの扱い」だけだった。
「今月こそ貯金する」と決めて、月末には何も残っていない。僕も何度もやってきた。そのたびに、自分はお金の管理が下手なんだと思っていた。
でも行動経済学の研究を読むと、貯まるかどうかを大きく分けているのは、意志の強さより、何もしなかったときにどうなるかのほうだった。
「最初から加入」にしただけで、86%が入った
アメリカのある大企業は、1998年に、退職金の積立制度(401(k))の入り方を変えた。それまでは、入りたい人が自分で申し込む方式だった。それを、入社した人は最初から加入していることにして、やめたい人だけが手続きをする方式にした。
この変更の前後を比べた研究では、勤続3〜15か月の社員の加入率は、37%から86%に上がった [1]。制度の中身は同じで、変えたのは「何もしなかったときの扱い」だけだ。
さらに、最初から加入した人の多くは、会社が初期設定にした積立の割合や運用先を、そのまま使い続けていた [1]。人は、決められた初期設定から、なかなか動かない。
やめる人だけが手続きをする → 86%
QUIZ次の昇給分の一部を積立に回すと先に約束する仕組みで、積立の割合は平均3.5%から13.6%に上がった。答えを見る
○。Save More Tomorrow。
今の手取りは減らさず、まだ受け取っていない昇給分を回す。セイラーとベナルツィの研究。
「来年の自分」に貯めさせる
もう一つの研究は、今すぐ貯金を増やすのはつらい、という気持ちを逆に使った。
行動経済学者のセイラーとベナルツィが考えた「Save More Tomorrow(明日はもっと貯めよう)」は、今の手取りは減らさず、次に給料が上がったときに、上がった分の一部を積立に回すと、先に約束してもらう仕組みだ。昇給のたびに積立の割合が少しずつ上がっていく。
この仕組みを使った人たちの積立の割合は、平均で3.5%から13.6%まで上がった [2]。
今の生活を削るのはつらい。でも、まだ受け取っていない昇給分なら、手放してもあまり痛くない。人は「今」と「未来」で、同じお金の重さを違って感じている。
日本で使える「先取り」の仕組み
2つの研究に共通しているのは、貯めることを、毎月の決断にしないということだ。日本でも、給料日に自動でお金を移す方法はいくつかある。
| 仕組み | どういうものか | 注意 |
|---|---|---|
| 財形貯蓄 | 給料から天引きで積み立てる。勤め先に制度がある場合に使える | 制度の有無と条件は勤め先で確認する |
| 自動積立定期預金 | 毎月決めた日に、普通預金から定期預金へ自動で移す | 銀行ごとに設定方法が違う |
| NISAのつみたて投資枠 | 毎月決めた額で投資信託を自動で買う。年120万円まで、運用益が非課税になる [3] | 投資なので元本は保証されない |
注意:投資には元本割れのリスクがある。この記事は特定の金融商品を勧めるものではない。どれを使うかは、自分の状況に合わせて決めてほしい。
自分の「初期設定」を変える3つ
- 給料日の翌日に、自動で移す。残ったら貯める、ではなく、先に移して残りで暮らす
- 昇給したら、増えた分の一部を積立に足す。手取りが減ったと感じずに、貯める割合を上げられる
- 一度決めたら、毎月は見直さない。見直すのは、年に一度や、収入が変わったときだけでいい
お金について考える順番そのものは、「お金について最初に読む本」にまとめている。
貯まらないのは、意志が弱いからではない。
何もしなくても貯まるように、最初の設定を変えればいい。
参考文献・出典
1. Madrian, B. C., & Shea, D. F. (2001). The Power of Suggestion: Inertia in 401(k) Participation and Savings Behavior. The Quarterly Journal of Economics, 116(4), 1149–1187.
2. Thaler, R. H., & Benartzi, S. (2004). Save More Tomorrow™: Using Behavioral Economics to Increase Employee Saving. Journal of Political Economy, 112(S1), S164–S187.
3. 金融庁「NISA特設ウェブサイト」
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