JOURNAL / WORK
2026.10.05

「この仕事、向いていない」は、どこまで本当か

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向いていないのは、仕事なのか、職場なのか。それとも、まだ慣れていないだけなのか。分けて考えると、答えが変わる。

ミスが続く。周りの人は簡単にこなしているように見える。毎朝、「自分はこの仕事に向いていないのかもしれない」と思う。

この感覚は、ときに正しく、ときに間違っている。問題は、「向いていない」が何に向いていないのかを区別していないことだ。

「相性」には、いくつかの層がある

働く人と環境の相性は、組織心理学で「適合(fit)」と呼ばれ、長く研究されてきた。172の研究を統合したメタ分析では、人と環境の適合が高いほど、仕事の満足度や組織へのコミットメントが高く、辞めたいという意図が低いことが示されている(Kristof-Brown, Zimmerman & Johnson, 2005)。

この研究で重要なのは、適合を一つではなく、いくつかの層に分けている点だ。

層意味合っていないときのサイン
仕事との適合能力や興味が、仕事内容に合っているか仕事そのものに興味が持てない。努力しても上達の手応えがない
組織との適合価値観が、会社の文化に合っているか会社が大切にしていることに共感できない
チームとの適合一緒に働く人と、働き方が合うか仕事は好きなのに、職場にいると疲れる
上司との適合上司との関係やコミュニケーション特定の人の前でだけ萎縮する

「向いていない」と感じたとき、それが仕事そのものの問題なのか、職場や人の問題なのかで、取るべき行動はまったく違う。仕事は好きなのに職場が合わないなら、職種を変える必要はない。同じ仕事を別の会社でやればいい。

「慣れていない」と「向いていない」は違う

もう一つ区別したいのが、時間の問題だ。新しい仕事を始めて数ヶ月なら、うまくいかないのは当然だ。誰にでも、できないことが多い時期がある。

見分けるヒントは、上達の傾きだ。半年前の自分と比べて、少しでもできることが増えているか。増えているなら、それは「向いていない」ではなく「まだ途中」だ。半年経ってもまったく手応えがなく、興味も持てないなら、仕事との適合を疑っていい。

辞める前に、仕事を「作り直す」

向いていないと感じたとき、選択肢は「我慢する」か「辞める」だけではない。

WrzesniewskiとDuttonは、働く人が自分の仕事を主体的に作り変えていく行動を「ジョブ・クラフティング」と名づけた(Wrzesniewski & Dutton, 2001)。具体的には、三つの方向がある。

もちろん、ジョブ・クラフティングで何でも解決するわけではない。裁量がほとんどない職場では、作り変える余地自体が小さい。ただ、試してみて変わらなかったなら、それは「向いていない」を考える判断材料の一つになる。辞めるかどうかを、感覚だけで決めずに済む。

今日のワーク

  1. 「向いていない」と感じる場面を、3つ書き出す
  2. それぞれが、仕事・組織・チーム・上司のどの層の問題かを分ける
  3. 半年前の自分と比べて、できるようになったことを1つ書く
例

場面:会議で発言できない/数字の資料作りが苦痛/上司に報告するのが怖い

層

会議と報告は「上司との適合」、資料作りは「仕事との適合」

判断

仕事内容より、上司との関係の比重が大きい → 職種を変えるより、環境を変える選択肢を考える

「向いていない」は、自分を責める言葉になりやすい。

何に向いていないのかを分けたとき、それは自分を知るための言葉に変わる。

参考文献・出典

Kristof-Brown, A. L., Zimmerman, R. D., & Johnson, E. C. (2005). Consequences of individuals' fit at work: A meta-analysis of person–job, person–organization, person–group, and person–supervisor fit. Personnel Psychology, 58(2), 281–342.

Wrzesniewski, A., & Dutton, J. E. (2001). Crafting a job: Revisioning employees as active crafters of their work. Academy of Management Review, 26(2), 179–201.