「転職すれば年収が上がる」という話もあれば、「転職して年収が下がった」という話もある。実際はどうなのか。
国の統計を見ると、ある程度はっきりした数字が出ている。
増えた人は4割、減った人は3割
厚生労働省の「令和6年 雇用動向調査」によると、2024年の1年間に転職した人のうち、前の職場と比べて賃金が「増加」した人は40.5%だった。前の年より3.3ポイント高い。一方、「減少」した人は29.4%で、前の年より3.0ポイント下がった。残りは「変わらない」などだ。
増えた人と減った人の差は11.1ポイントで、その差は前年より広がった。人手不足が続く中で、転職で賃金が上がりやすい環境になりつつあると言える。
ただ、裏を返せば、転職した人の3割は賃金が下がっている。転職すれば自動的に上がるわけではない。
年収は「個人の能力」だけで決まらない
年収を考えるときに見落としやすいのが、年収の多くは、どの業界・どの会社・どの職種にいるかで決まるという点だ。
同じ能力の人でも、利益率の高い業界や、給与水準の高い会社にいれば、年収は高くなる。逆に、どれだけ頑張っても、会社の給与テーブルの上限を超えることは難しい。
だから、年収を上げる転職には大きく二つの方向がある。
- 同じ仕事を、給与水準の高い場所でやる:今の経験がそのまま評価されるので、上がりやすい
- 需要が伸びている仕事に移る:一時的に下がることもあるが、数年単位で上がる余地が大きい
逆に下がりやすいのは、経験が活かせない未経験の職種に移る場合や、年収以外の条件(働き方、勤務地、仕事内容)を優先した場合だ。これは失敗ではなく、何を優先したかの結果でもある。
年収が上がる転職のために確認すること
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 今の年収の内訳(基本給、賞与、残業代、手当) | 残業代が多い人は、残業の少ない会社に移ると年収が下がることがある |
| 提示年収に何が含まれているか | 固定残業代、賞与の想定額など、比べる単位をそろえる |
| 入社後の昇給の仕組み | 初年度の年収より、3年後・5年後の伸びが大きいこともある |
| 同じ職種の相場 | 求人票や転職サービスの情報で、相場を把握してから交渉する |
特に一つ目は見落としやすい。「年収が下がった」と感じる人の中には、実は残業が減った分だけ下がった、というケースも少なくない。時給に直すと上がっていることもある。
年収交渉は、してもいい
内定が出たあと、提示された年収に対して希望を伝えることは、珍しいことではない。根拠として、今の年収、他社の提示額、同じ職種の相場を示せると話が進みやすい。
自分で交渉するのが難しければ、転職エージェントが代わりに交渉してくれることもある。エージェントは入社した人の年収に応じて報酬を受け取る仕組みなので、年収交渉には前向きなことが多い。
今日のワーク
- 源泉徴収票を見て、去年の年収の内訳を書き出す
- 残業代を除いた年収と、時給を計算する
- 転職で一番上げたいのが「年収」なのか、それ以外なのかを決める
転職で年収が上がる人は増えている。でも、全員ではない。
年収は、頑張りの量ではなく、どこで働くかで大きく変わる。
参考文献・出典
厚生労働省「令和6年 雇用動向調査結果の概況」
労働新聞社「令和6年 雇用動向調査」 https://www.rodo.co.jp/series/205462/