2026.10.08 / BODY / HORMONE

EGCG(緑茶)と大豆は、DHTを下げるのか。試験管と人の研究を分けて確かめる

約7分で読めます(目安)

「緑茶のEGCGはDHTを下げる」「大豆で薄毛を防ぐ」。そんな話を見かけます。実際の研究を、試験管の研究と人の研究に分けて確かめてみます。

QUIZ緑茶のEGCGは、試験管で5α-リダクターゼを止めたので、人のDHTも下げることが確かめられている。答えを見る

×。細胞の中では効かなかった。

酵素だけの試験では強く止めたが、生きた細胞の試験では止めなかった。人でDHTが下がった試験は見つからなかった。

目次

先に結論

試験管・動物人の試験結論
EGCG(緑茶)酵素だけの試験では強く止めた。細胞の試験では効かなかったDHTを測った試験は見つからなかった人でDHTが下がるとは言えない
大豆—1つの試験ではDHTが9〜15%下がった。まとめると男性ホルモンへの影響なしDHTを下げる目的で食べる根拠は弱い

DHTと5α-リダクターゼの基本は、5α-リダクターゼとDHTの記事に書いています。

EGCG:試験管では5α-リダクターゼを止めた

緑茶に多いカテキンの一つ、EGCG(エピガロカテキンガレート)は、1995年の研究で、5α-リダクターゼを止める働きがあると報告されました。酵素だけを取り出して調べた試験で、EGCGなど「ガレート」のついたカテキンは、5α-リダクターゼの2つの型のうち、1型を強く止めました。オスのラットにEGCGを与えると、前立腺などアンドロゲンの影響を受ける器官が小さくなったことも報告されています [1]。

ここだけ見ると、「緑茶はDHTを下げる」と言いたくなります。でも、話には続きがあります。

でも、細胞の中では効かなかった

同じ研究グループが2002年に、さまざまなポリフェノールを詳しく調べ直しました。その結果、EGCGは、酵素だけを取り出した試験では強く働く一方、生きた細胞を使った試験では5α-リダクターゼを止めなかったと報告しています [2]。

体の中で働くには、EGCGが細胞の中に入り、酵素のところまで届く必要があります。試験管の中で働くことと、体の中で働くことは別の話です。

POINT

試験管で酵素を止めることと、人の体でDHTが下がることの間には、大きな距離がある。

人でDHTが下がった試験は、見つからなかった

僕が調べた範囲では、人にEGCGや緑茶エキスを飲んでもらい、血液のDHTが下がったことを確かめたランダム化比較試験は見つかりませんでした。緑茶のカテキンを使った人の試験はありますが、前立腺の病気の予防や安全性を調べたもので、DHTは主な結果として報告されていません。

緑茶やEGCGが、細胞やマウスの実験で毛に関わる作用を示したという報告はあります。でも、それを人の薄毛にそのまま当てはめることはできません。

EGCGのサプリには、とりすぎの注意がある

欧州食品安全機関(EFSA)は2018年、サプリとしてとるEGCGが1日800mg以上になると、肝臓の数値(トランスアミナーゼ)が上がったという試験結果から、安全といえる量を決められなかったと報告しました。ふつうに淹れた緑茶は、一般に安全と考えられています。お茶から1日にとるEGCGは平均でおよそ90〜300mgで、サプリでは1日5〜1,000mgと幅があります [3]。

「DHTを下げるため」に、緑茶エキスのサプリを大量にとるのはおすすめできません。

豆(大豆):1つの試験ではDHTが下がった

大豆については、DHTが下がったという試験があります。健康な若い男性35人に、牛乳たんぱく、イソフラボンの少ない大豆たんぱく、イソフラボンの多い大豆たんぱくを、それぞれ57日ずつとってもらった試験です。

牛乳たんぱくと比べて、DHTは、イソフラボンの少ない大豆たんぱくで9.4%、多い大豆たんぱくで15%低くなりました。ただし、イソフラボンの量で効果がはっきり分かれたわけではなく、論文のタイトルも「生殖ホルモンへの影響は小さい」となっています [4]。

QUIZ41の研究をまとめた分析で、大豆やイソフラボンは男性のテストステロンを下げていた。答えを見る

×。影響はなかった。

テストステロン、遊離テストステロン、エストロゲン、SHBGのどれにも影響はなかった。量や期間で分けても同じだった。

でも、41の研究をまとめると影響はなかった

大豆と男性ホルモンについては、たくさんの試験をまとめた分析があります。2010年の分析では、大豆たんぱくやイソフラボンは、テストステロン、SHBG、遊離テストステロンに影響しませんでした [5]。2021年に41の研究をまとめ直した分析でも、大豆やイソフラボンは、テストステロン、遊離テストステロン、エストロゲン、SHBGのどれにも影響しませんでした。イソフラボンの量や期間で分けても、結果は同じでした [6]。

つまり、大豆は「男性ホルモンを下げる食べ物」でも「女性化させる食べ物」でもなく、ふつうに食べて大丈夫だと考えられます。ただ、DHTを下げる目的で食べる根拠としては弱い、ということです。

まとめ:薄毛が気になるなら

薄毛(AGA)が気になるときは、研究で効果が確かめられている治療があります。5α-リダクターゼとDHTの記事を読んだうえで、皮膚科で相談してください。

参考文献

1. Liao, S., & Hiipakka, R. A. (1995). Selective inhibition of steroid 5α-reductase isozymes by tea epicatechin-3-gallate and epigallocatechin-3-gallate. Biochemical and Biophysical Research Communications, 214(3), 833–838.

2. Hiipakka, R. A., Zhang, H.-Z., Dai, W., Dai, Q., & Liao, S. (2002). Structure–activity relationships for inhibition of human 5α-reductases by polyphenols. Biochemical Pharmacology, 63(6), 1165–1176.

3. EFSA Panel on Food Additives and Nutrient Sources added to Food (ANS). (2018). Scientific opinion on the safety of green tea catechins. EFSA Journal, 16(4), 5239.

4. Dillingham, B. L., McVeigh, B. L., Lampe, J. W., & Duncan, A. M. (2005). Soy protein isolates of varying isoflavone content exert minor effects on serum reproductive hormones in healthy young men. Journal of Nutrition, 135(3), 584–591.

5. Hamilton-Reeves, J. M., Vazquez, G., Duval, S. J., et al. (2010). Clinical studies show no effects of soy protein or isoflavones on reproductive hormones in men: results of a meta-analysis. Fertility and Sterility, 94(3), 997–1007.

6. Reed, K. E., Camargo, J., Hamilton-Reeves, J., Kurzer, M., & Messina, M. (2021). Neither soy nor isoflavone intake affects male reproductive hormones: an expanded and updated meta-analysis of clinical studies. Reproductive Toxicology, 100, 60–67.

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