2026.10.05 / BODY / SCIENCE

匂いケアは
「脇と足の裏」から。
原因が違えば、対策も違う

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目次

あなたは、自分の匂いを嗅いだことがありますか。

おそらく「ある」と答える人が多いと思います。しかし、自分の体臭は、自分では気づきにくいことがあります。

この記事では、体臭の出どころとして重要な「脇」と「足の裏」を取り上げます。この2か所は、どちらも匂いの原因になりやすい場所です。ただし、その仕組みは同じではありません。

研究を整理すると、脇では遺伝的な個人差が知られている一方、足では靴の中の湿度や微生物など、環境条件も重要であることが見えてきます。

1. 自分の匂いは、なぜ自分では分かりにくいのか

嗅覚の順応を調べた研究(Dalton, 2000)によると、人の嗅覚には、同じ匂いを嗅ぎ続けると、その匂いを感じにくくなる「順応」という性質があります [1]。

いつも自分の身体の近くにある匂いも、こうした嗅覚の性質によって、意識しにくくなる可能性があります。ただし、この研究は体臭そのものではなく、嗅覚の順応一般を扱ったものです。

自分で「大丈夫」と感じることと、他人にどう感じられているかは、必ずしも同じではありません。

2. 匂いの正体は、汗そのものではなく「菌の分解物」

脇では、分泌された時点では匂いの弱い前駆物質を、皮膚に存在する細菌が酵素で分解することで、匂い成分が生じることが示されています [2]。

体臭が生まれる大まかな流れ
匂いのもとになる
成分が分泌される
→
皮膚の微生物が
代謝・分解する
→
匂い成分が
生じる

つまり、匂いへの対策は単に「汗を拭く」だけではありません。汗を減らす、菌の働きを抑える、匂いのもとになる成分を洗い流す。原因を分けて考えると、ケアの方向が見えやすくなります。

3. 脇:匂いには遺伝的な個人差がある

脇の匂いには、大きな個人差があります。その理由の一部は、遺伝です。

ABCC11という遺伝子の1塩基の違いが、耳垢が湿っている「湿型」か、乾いている「乾型」かを決めることが報告されています [3]。さらに、この遺伝子の働きが、脇の典型的な匂い成分の形成に関係していることも示されています [4]。

日本人を対象にした研究でも、腋臭症と湿型耳垢との間に強い関連が確認されています [5]。東アジアでは乾型耳垢の頻度が高いことも知られています。

ただし、耳垢が乾いているから絶対に臭わない、湿っているから必ず強く臭う、と断定することはできません。

脇の匂いの強さと「清潔かどうか」は、同じ話ではない。

きちんと身体を洗っていても、体質的に脇の匂いが出やすい人はいます。反対に、あまり匂いが出ない人もいます。

4. 足の裏:汗と、靴の中の環境

足の裏を含む手足は、汗腺の密度が非常に高い部位です [6]。ただし、汗腺の数が多いことと、常に大量の汗を出していることは同じではありません。

足で重要なのは、靴や靴下によって覆われていることです。汗が蒸発しにくく、湿度が上がり、温度が保たれ、微生物が活動しやすい環境になります。

足の匂いの原因物質の一つとして知られているのが、イソ吉草酸です。研究では、足の微生物が汗などに含まれる成分を代謝し、匂い成分を生み出す仕組みが報告されています [7][8]。

つまり足の匂いでは、足そのものだけでなく、靴の中の環境を見る必要があります。

5. 匂いは、人の印象にも影響する

嫌悪は、腐敗物や病原体など、身体に害を与える可能性のあるものを避けるために発達した適応的な仕組みだと考えられています [9]。

さらに、参加者が意識的には判別できないほど弱い快・不快臭を提示しながら中立的な顔を見せた実験では、顔への好感度評価が変化しました [10]。

匂いは、「臭い」とはっきり認識される前から、人の印象に影響する可能性があります。

6. 脇と足では、対策の考え方も違う

脇では、遺伝的な個人差と皮膚細菌による分解が重要です。足では、発汗だけでなく、靴内の湿度や微生物環境も重要になります。

制汗剤は主に発汗そのものを抑えることを目的とし、デオドラントは菌の増殖や匂いを抑えることを目的とする製品が中心です [11]。成分表示の見方は、制汗剤とデオドラントの選び方で整理しています。

原因に合わせて、狙いを変える
脇
発汗を抑える
菌の働きを抑える
/
足
洗う・乾かす
靴の湿気を管理する

匂いが極端に強い場合や、汗の量が日常生活に支障をきたすほど多い場合は、皮膚科などの医療機関に相談する選択肢もあります。

7. 「とにかく洗う」だけではなく、原因を見る

身体の匂いが気になると、「もっと洗えばいい」と考えてしまいがちです。もちろん、清潔にすることは大切です。

しかし、脇では遺伝的な個人差があり、足では靴の中の湿度や微生物の環境が関係します。

どこが臭うのか。なぜ臭うのか。

原因が分かれば、やることはシンプルになります。

匂いをゼロにする必要はありません。過剰に気にする必要もありません。

ただ、人と会う前に脇を整える。足と靴を乾かす。服を清潔にする。

自分では分からないからこそ、先回りして整えておく。

そのくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

参考文献

1. Dalton P. Psychophysical and behavioral characteristics of olfactory adaptation. Chemical Senses. 2000;25(4):487–492.

2. Natsch A, et al. A specific bacterial aminoacylase cleaves odorant precursors secreted in the human axilla. J Biol Chem. 2003;278(8):5718–5727.

3. Yoshiura K, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nature Genetics. 2006;38(3):324–330.

4. Martin A, et al. A functional ABCC11 allele is essential in the biochemical formation of human axillary odor. J Invest Dermatol. 2010;130(2):529–540.

5. Nakano M, et al. A strong association of axillary osmidrosis with the wet earwax type determined by genotyping of the ABCC11 gene. BMC Genetics. 2009;10:42.

6. Taylor NAS, Machado-Moreira CA. Regional variations in transepidermal water loss, eccrine sweat gland density, sweat secretion rates and electrolyte composition. Extreme Physiology & Medicine. 2013;2:4.

7. Kanda F, et al. Elucidation of chemical compounds responsible for foot malodour. British Journal of Dermatology. 1990;122(6):771–776.

8. Ara K, et al. Foot odor due to microbial metabolism and its control. Canadian Journal of Microbiology. 2006;52(4):357–364.

9. Curtis V, de Barra M, Aunger R. Disgust as an adaptive system for disease avoidance behaviour. Phil Trans R Soc B. 2011;366(1563):389–401.

10. Li W, et al. Subliminal smells can guide social preferences. Psychological Science. 2007;18(12):1044–1049.

11. Benohanian A. Antiperspirants and deodorants. Clinics in Dermatology. 2001;19(4):398–405.

※本記事は研究を一般向けに紹介するもので、個別の診断や治療を目的とするものではありません。

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