パレオダイエットとは、なんぞや。「原始人の食事」を研究で確かめる
約8分で読めます(目安)
パレオダイエットの「パレオ」は、旧石器時代(Paleolithic)のことです。農業が始まる前、人類が狩りと採集で暮らしていたころの食事に戻れば、現代の病気を減らせるのではないか。そういう考え方の食事法です。
QUIZ2年間の試験で、パレオダイエットは2年後も、ほかの食事よりはっきり体脂肪を減らしていた。答えを見る
×。6か月では差があったが、2年では差がはっきりしなかった。
肥満の閉経後女性70人の試験。6か月では6.5kg対2.6kg、24か月では4.6kg対2.9kgで、はっきりした差ではなかった。
目次
何を食べて、何を食べないのか
やり方は提唱者によって少しずつ違いますが、試験で使われた代表的な内容は次のようなものです [1] [2]。
| 食べるもの | やめるもの |
|---|---|
| 赤身の肉、魚、卵、野菜、果物、イモ類などの根菜、ナッツ | 穀物(米・小麦など)、豆類、乳製品、砂糖、塩、加工食品 |
日本の食卓に置きかえると、ごはん、パン、麺、納豆や豆腐、牛乳やヨーグルトをやめることになります。かなり大きな変化です。
考え方の出どころ
この考え方が広く知られるきっかけになったのは、1985年に医学誌に載った「旧石器時代の栄養」という論文です。著者のイートンとコナーは、人間の体は長い狩猟採集の時代に合わせてできあがっていて、農業が始まってからの短い期間の食事の変化に追いついていない。そのずれが、現代の慢性的な病気の一因ではないか、と論じました [3]。
POINT
「体は昔のまま、食事だけが変わった」。これがパレオダイエットの出発点です。
試験の結果:短期では良い。長期では差が縮む
パレオダイエットを、ほかの食事法と比べたランダム化比較試験があります。
12週間の試験。心臓病があり、血糖の調節が悪い人29人を、パレオダイエットと地中海風の食事に分けた試験では、どちらのグループも血糖の上がり方が改善し、改善の幅はパレオダイエットで26%、地中海風の食事で7%でした。この差は、ウエストの減り方では説明できなかったと報告されています [1]。
4つの試験のまとめ。メタボリックシンドロームの要素がある人を対象にした4つの試験をまとめた分析では、パレオダイエットは、診療指針にもとづく食事と比べて、短い期間ではメタボリックシンドロームのいくつかの要素をより改善していました。ただし、善玉コレステロールと空腹時血糖では、はっきりした差は出ませんでした。著者らは、さらに評価が必要だとしています [4]。
2年間の試験。肥満の閉経後女性70人を、パレオダイエットと北欧の栄養推奨にもとづく食事に分け、どちらもカロリーを制限せずに2年間続けた試験では、6か月の時点では、パレオダイエットのほうが体脂肪が大きく減りました(6.5kg対2.6kg)。ところが24か月の時点では、4.6kg対2.9kgで、はっきりした差はなくなっていました。中性脂肪は、6か月でも24か月でもパレオダイエットのほうが下がっていました [2]。
| 試験 | 期間・人数 | 結果 |
|---|---|---|
| 心臓病と血糖の異常がある人 | 12週間・29人 | 血糖の上がり方の改善がより大きかった |
| 4つの試験のまとめ | 短期 | メタボの要素のいくつかがより改善。一部は差なし |
| 肥満の閉経後女性 | 2年間・70人 | 6か月では体脂肪がより減ったが、2年では差がはっきりしなかった |
どの試験も人数が少なく、期間も長くありません。「短い期間では、ほかの食事より良い結果が出ることがある。でも長く続けたときの差は分からない」というのが、今の研究から言えることです。
QUIZネアンデルタール人の歯石から、加熱された穀物などのでんぷん粒が見つかった。答えを見る
○。植物を加熱して食べていた。
イラクとベルギーの遺跡のネアンデルタール人の歯石から、大麦などのでんぷん粒が見つかり、一部に加熱の跡があった。
原始人は、本当に穀物を食べていなかったのか
パレオダイエットの前提には、考古学からの疑問もあります。
ネアンデルタール人の歯にこびりついた歯石を調べた研究では、大麦などの穀物を含む植物のでんぷん粒が見つかり、その一部には加熱された跡がありました [5]。
さらに、イタリア、ロシア、チェコの約3万年前の遺跡から出た石の道具には、野生の植物のでんぷんが残っていました。研究者たちは、植物をすりつぶして粉にする作業が、少なくとも約3万年前のヨーロッパで広く行われていた可能性があるとしています [6]。
旧石器時代の人たちは、住んでいる場所でとれるものを幅広く食べていたようです。「原始人は肉と野菜だけを食べていた」というイメージは、少なくとも単純すぎます。
見落としやすい注意点:ヨウ素
先ほどの2年間の試験を追加で分析した研究では、パレオダイエットのグループで、6か月後に尿中のヨウ素が大きく減り、ヨウ素不足のリスクが高まっていました。パレオダイエットでは、ヨウ素の大きな供給源である乳製品と食卓塩をとらないためと考えられています。著者らは、パレオダイエットをするならヨウ素の補給を考えるべきだとしています [7]。
日本では海藻からヨウ素をとる人が多いので、事情は同じではありません。それでも、乳製品をやめるならカルシウム、穀物や豆をやめるなら食物繊維など、何かを丸ごとやめると、そこからとっていた栄養が足りなくなりやすいことは覚えておきたいところです。
まとめ:取り入れるなら
- パレオダイエットは、狩猟採集の時代の食事に戻ろうとする食事法。穀物、豆、乳製品、砂糖、加工食品をやめる
- 短期の試験では、体重や血糖、代謝の数値で、ほかの食事より良い結果が出ることがある
- 2年間の試験では、体脂肪の差ははっきりしなくなった。長期の効果は分かっていない
- 旧石器時代の人も、植物のでんぷんを加熱したり粉にしたりして食べていた可能性がある
- 乳製品と塩をやめると、ヨウ素が不足しやすくなるという報告がある
僕の考えでは、パレオダイエットから取り入れやすいのは「加工食品と砂糖を減らし、肉や魚、野菜、果物を中心にする」という部分です。穀物や豆、乳製品まで丸ごとやめるかどうかは、研究からはまだ決められません。持病がある人や、食事を大きく変えたい人は、医師や管理栄養士に相談してください。
参考文献
1. Lindeberg, S., Jönsson, T., Granfeldt, Y., et al. (2007). A Palaeolithic diet improves glucose tolerance more than a Mediterranean-like diet in individuals with ischaemic heart disease. Diabetologia, 50(9), 1795–1807.
2. Mellberg, C., Sandberg, S., Ryberg, M., et al. (2014). Long-term effects of a Palaeolithic-type diet in obese postmenopausal women: a 2-year randomized trial. European Journal of Clinical Nutrition, 68(3), 350–357.
3. Eaton, S. B., & Konner, M. (1985). Paleolithic nutrition: a consideration of its nature and current implications. New England Journal of Medicine, 312(5), 283–289.
4. Manheimer, E. W., van Zuuren, E. J., Fedorowicz, Z., & Pijl, H. (2015). Paleolithic nutrition for metabolic syndrome: systematic review and meta-analysis. American Journal of Clinical Nutrition, 102(4), 922–932.
5. Henry, A. G., Brooks, A. S., & Piperno, D. R. (2011). Microfossils in calculus demonstrate consumption of plants and cooked foods in Neanderthal diets (Shanidar III, Iraq; Spy I and II, Belgium). PNAS, 108(2), 486–491.
6. Revedin, A., Aranguren, B., Becattini, R., et al. (2010). Thirty thousand-year-old evidence of plant food processing. PNAS, 107(44), 18815–18819.
7. Manousou, S., Stål, M., Larsson, C., et al. (2018). A Paleolithic-type diet results in iodine deficiency: a 2-year randomized trial in postmenopausal obese women. European Journal of Clinical Nutrition, 72(1), 124–129.
もう1問 ○×クイズ