スクワットで、血中のDHEAは増えるのか。上がるのは「直後」と「筋肉の中」
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スクワットで「若返りホルモン」のDHEAが増える。そんな話を見かけます。研究を調べると、上がるのは本当でした。ただし、上がるのは「運動の直後」と「筋肉の中」です。
QUIZ筋トレ(レッグプレスとベンチプレス)の直後、血中のDHEA-Sは男女とも上がった。答えを見る
○。ただし上がったのは直後。
日本の男女6人ずつの研究。テストステロンは男性では上がったが、女性ではむしろ下がっていた。
目次
DHEAとは:テストステロンなどの「もと」
DHEA(デヒドロエピアンドロステロン)は、おもに副腎でつくられるホルモンで、血液の中では硫酸がついた形(DHEA-S)で多く流れています。体の中で、テストステロンなどのアンドロゲンや女性ホルモンの「もと」になります。20代前後をピークに、年齢とともに大きく下がることが知られています(詳しくはDHEAの記事に書きました)。
では、スクワットのような筋トレで、DHEAは増えるのでしょうか。先に結論を書くと、スクワットだけでDHEAを測った研究は、僕が調べた範囲では見つかりませんでした。この記事では、脚を使う筋トレの研究から分かることを、「直後の血液」「筋肉の中」「長く続けた場合」に分けて整理します。
筋トレの直後、血中のDHEA-Sは上がった
日本の研究で、若い男性6人と女性6人に、レッグプレスとベンチプレスを10回×3セットずつ(10回が限界の重さ、休憩1分)行ってもらい、運動前から24時間後まで血液を調べたものがあります [1]。
結果、血中のDHEA-Sは、男女とも運動の直後に上がりました。一方、テストステロンは男性では直後に上がりましたが、女性ではむしろ下がっていました [1]。
ただし、参加者は男女6人ずつと少なく、上がったのは運動直後です。筋トレのあと、DHEA-Sが高い状態がずっと続くことを示した研究ではありません。
スクワットは、マシンより直後のホルモンが高かった
スクワットそのものに近い研究もあります。筋トレ経験のある男性10人に、同じ相対的な重さでスクワットとレッグプレスを10回×6セットずつ、1週間あけて行ってもらった比較です。運動直後のテストステロンと成長ホルモンは、どちらでも上がりましたが、スクワットのほうが高くなっていました [2]。
体を自分で支えて、全身を使うフリーウェイトのほうが、ホルモンの反応が大きかったという結果です。ただしこの研究は、DHEAは測っていません。また、測ったのは運動後30分までの変化だけです [2]。
POINT
筋トレの直後、DHEA-Sやテストステロンは上がる。でもそれは「その日だけ、少しのあいだ」の変化だ。
12週続けると、筋肉の中のDHEAが増えた
長く続けた場合で興味深いのが、日本の研究です。筋肉は、DHEAからテストステロンやDHT(ジヒドロテストステロン)を自分でつくることができます。この研究では、高齢男性13人(平均67歳)が、ひざの曲げ伸ばしの筋トレ(最大で持ち上げられる重さの70%から)を週3回、12週間続けました [3]。
太ももの筋肉を少し取って調べると、トレーニング前の高齢男性は、若い男性より筋肉の中の性ホルモンや、それをつくる酵素が少なくなっていました。それが12週の筋トレで回復し、筋肉の中のDHEAは約1.6倍(タンパク質1µgあたり432pgから682pg)に増えていました [3]。DHTや、5α-リダクターゼなどの酵素も増えていました(DHTについては5α-リダクターゼとDHTの記事へ)。
ここで大事なのは、増えたのが「血中」ではなく「筋肉の中」のDHEAだということです。また、使ったのはスクワットではなく、ひざの曲げ伸ばしのマシンでした。高齢男性13人の小さな研究でもあります。
長く続けた場合の、血中のDHEA(S)
65歳以上を対象にした22のランダム化比較試験をまとめた研究では、定期的な運動はDHEA(S)を増やし、ストレスホルモンのコルチゾールを下げる、という結果でした。運動の種類による、はっきりした差は見られませんでした [4]。
ただし、証拠の確かさは「低〜中」と評価されています。若い人や、スクワットだけを続けた場合に同じことが言えるかは、まだ分かりません。
QUIZ運動直後にテストステロンが大きく上がった人ほど、筋肉や筋力が大きく伸びた。答えを見る
×。関係していなかった。
若い男性56人が12週間筋トレをした研究。直後のホルモンの上がり方は、筋肉がつくかどうかの目安になりにくい。
上がったホルモンで、筋肉は増えるのか
「ホルモンが上がるから、スクワットで筋肉がつく」と言われることがあります。でも、これは別の話です。
若い男性56人が12週間の筋トレをした研究では、運動直後のテストステロンなどの上がり方と、筋肉や筋力の伸びとの関係を調べました。その結果、テストステロンの上がり方は、筋肉や筋力の伸びと関係していませんでした [5]。
運動直後のホルモンの上がり方の大きさは、筋肉がつくかどうかの目安にはなりにくい、ということです。DHEAでも同じように考えるのが自然だと思います。
まとめ:スクワットをする理由
- 筋トレの直後、血中のDHEA-Sは男女とも上がった。ただし小さな研究で、上がったのは直後だけ
- スクワットは、レッグプレスより直後のテストステロンと成長ホルモンが高かった(DHEAは測っていない)
- 高齢男性が脚の筋トレを12週続けると、筋肉の中のDHEAが約1.6倍になった
- 高齢者では、運動を続けるとDHEA(S)が上がるという結果があるが、確かさは低〜中
- 直後のホルモンの上がり方は、筋肉の伸びとは関係しなかった
だから僕は、スクワットを「DHEAを上げるため」にはしません。脚とお尻の大きな筋肉を使い、筋力と体を保つためにします。DHEAの変化は、そのおまけくらいに考えておくのがちょうどいいと思います。
DHEAのサプリについては、2年間飲んでも体組成や体力が改善しなかった試験があり、日本では医薬品の扱いです(DHEAの記事)。テストステロンの記事もあわせてどうぞ。
参考文献
1. Aizawa, K., Akimoto, T., Hayashi, K., Nakamura, M., et al. (2001). Serum steroid hormone responses to acute resistance exercise. 体力科学, 50(3), 293–302.
2. Shaner, A. A., Vingren, J. L., Hatfield, D. L., Budnar, R. G., Duplanty, A. A., & Hill, D. W. (2014). The acute hormonal response to free weight and machine weight resistance exercise. Journal of Strength and Conditioning Research, 28(4), 1032–1040.
3. Sato, K., Iemitsu, M., Matsutani, K., Kurihara, T., Hamaoka, T., & Fujita, S. (2014). Resistance training restores muscle sex steroid hormone steroidogenesis in older men. FASEB Journal, 28(4), 1891–1897.
4. De Nys, L., Ofosu, E. F., Ryde, G. C., Connelly, J., & Whittaker, A. C. (2023). Physical activity influences cortisol and dehydroepiandrosterone (sulfate) levels in older adults: A systematic review and meta-analysis. Journal of Aging and Physical Activity, 31(2), 330–351.
5. West, D. W. D., & Phillips, S. M. (2012). Associations of exercise-induced hormone profiles and gains in strength and hypertrophy in a large cohort after weight training. European Journal of Applied Physiology, 112(7), 2693–2702.
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