2026.10.08 / BODY / BRAIN

扁桃体とは何か。恐怖をつくる脳の部位と、睡眠・言葉・ストレスの研究

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怖い、不安だ、イライラする。そうした反応の中心にあると考えられているのが、脳の奥にある小さな部位、扁桃体です。扁桃体が壊れた人、寝不足の人、気持ちを言葉にした人の研究から、扁桃体がどう働いているのかを見ていきます。

QUIZ左右の扁桃体が壊れた女性は、ヘビやお化け屋敷にも怖がる様子を見せなかった。答えを見る

○。ほかの感情はふつうにあった。

ウルバッハ・ビーテ病の患者SMの研究。恐怖だけをほとんど感じず、怒りや悲しみ、喜びはふつうに示した。

目次

扁桃体とは

扁桃体は、脳の左右の側頭葉の奥にある、アーモンド(扁桃)のような形をした小さな部位です。危険や恐怖など、感情に関わる情報の処理で中心的な役割を持つと考えられています。

扁桃体が壊れた人は、怖さを感じなかった

まれな病気(ウルバッハ・ビーテ病)で、左右の扁桃体が壊れた「SM」と呼ばれる女性を調べた研究があります。研究者たちは、本物のヘビやクモ、お化け屋敷、怖い映画などで恐怖を引き出そうとしましたが、SMは一度も怖がる様子を見せず、怖さをほとんど感じていないと答えました。ヘビやクモにはむしろ好奇心を示していました。一方で、怒り、悲しみ、喜びなどの感情はふつうに示していました [1]。

一人の患者の研究なので、一般化には限界があります。それでも、扁桃体が「怖い」を生むうえで欠かせない部位であることを強く示した結果です。

POINT

扁桃体がなかった人は、ほかの感情はあるのに、「怖い」だけを感じなかった。

気づかないうちに、扁桃体は反応している

健康な10人に、怖がっている顔や笑っている顔を、本人が気づけないほど短く見せ、すぐ別の顔で隠す実験では、10人中8人は表情が見えたと気づいていませんでした。それでも、怖がっている顔に対して扁桃体の活動が高まりました [2]。

ただし、この結果は、隠すために使った顔との組み合わせで反応が出た可能性があるなど、その後の研究で解釈が議論されています。

寝不足の扁桃体は、約60%強く反応した

一晩以上眠らなかった若い人たちと、ふつうに眠った人たちに、不快な画像を見せた研究では、寝不足のグループで扁桃体の反応が約60%大きくなっていました。さらに、ふだんは扁桃体の反応を抑える前頭葉(内側前頭前野)とのつながりが弱まっていました [3]。

寝不足の日にイライラしやすいのは、気持ちの問題だけではないのかもしれません。睡眠については寝だめの記事や寝不足と第一印象の記事にも書いています。

QUIZ感情を「怒り」などの言葉で表すと、扁桃体の反応はかえって大きくなった。答えを見る

×。小さくなった。

感情にラベルをつけると、扁桃体の反応が小さくなり、前頭葉の一部の活動が高まった。

気持ちを言葉にすると、扁桃体の反応が下がった

怒った顔などの写真を見ながら、その感情を「怒り」のような言葉で選ぶ(ラベルをつける)実験では、ほかのやり方で写真を処理したときより、扁桃体の反応が小さくなりました。代わりに前頭葉の一部(右腹外側前頭前野)の活動が高まり、その活動が強い人ほど扁桃体の反応が小さいという関係が見られました [4]。

つまり、「いま自分は不安なんだ」と言葉にすることが、反応にブレーキをかける助けになる可能性があります。

ストレスが減った人では、扁桃体の一部の密度が下がった

ストレスを感じている健康な26人が、8週間のマインドフルネスのプログラム(MBSR)を受けた研究では、ストレスが大きく減った人ほど、右の扁桃体の一部(基底外側部)の灰白質の密度が大きく下がっていました [5]。

比べるための対照群のない、少人数の研究です。プログラムが脳を変えたと言い切ることはできません。それでも、心の状態の変化と、扁桃体の構造の変化が一緒に起きていたことは興味深い結果です。

まとめ

扁桃体を「なくす」必要はありません。危険から守ってくれる大事な部位です。眠ること、気持ちを言葉にすることは、その反応とうまく付き合う方法になりそうです。恐怖との付き合い方は恐怖の記事にも書いています。

参考文献

1. Feinstein, J. S., Adolphs, R., Damasio, A., & Tranel, D. (2011). The human amygdala and the induction and experience of fear. Current Biology, 21(1), 34–38.

2. Whalen, P. J., Rauch, S. L., Etcoff, N. L., McInerney, S. C., Lee, M. B., & Jenike, M. A. (1998). Masked presentations of emotional facial expressions modulate amygdala activity without explicit knowledge. Journal of Neuroscience, 18(1), 411–418.

3. Yoo, S.-S., Gujar, N., Hu, P., Jolesz, F. A., & Walker, M. P. (2007). The human emotional brain without sleep—a prefrontal amygdala disconnect. Current Biology, 17(20), R877–R878.

4. Lieberman, M. D., Eisenberger, N. I., Crockett, M. J., et al. (2007). Putting feelings into words: affect labeling disrupts amygdala activity in response to affective stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.

5. Hölzel, B. K., Carmody, J., Evans, K. C., et al. (2010). Stress reduction correlates with structural changes in the amygdala. Social Cognitive and Affective Neuroscience, 5(1), 11–17.

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