習慣は「行動」ではなく「文脈」に結びつく。環境が変わると習慣が崩れる理由
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引っ越したら、続いていた運動が止まった。旅行先では、毎朝のルーティンを忘れていた。そんな経験はないでしょうか。習慣は、行動そのものより、その行動をしていた「文脈」に結びついてできています。
QUIZ映画館でポップコーンを食べる習慣のある人は、1週間前の湿気たポップコーンでも、作りたてとほぼ同じだけ食べた。答えを見る
○。会議室では減った。
習慣は文脈に結びついている。映画館という文脈がそろうと手が動き、反対の手で食べると食べる量が減った。
目次
習慣とは「文脈」と行動の結びつき
習慣の研究をまとめた総説では、習慣は「くり返し同じ文脈で行われてきた行動」とされています。くり返すうちに、場所、時間、直前の行動といった文脈が手がかり(合図)になり、その合図だけで行動が自動的に始まるようになります [1]。
だから習慣は、目的とは別に動きます。動物の研究では、ごほうびの価値が下がっても、合図があれば同じ行動を続けることが、習慣になった行動の目印とされてきました [1]。
POINT
習慣は「何をするか」より、「どこで、いつ、何のあとにするか」に結びついている。
映画館では、湿気たポップコーンでも食べ続けた
この性質をよく示す実験があります。映画を見るときにいつもポップコーンを食べている人たちに、映画館で、作りたてのポップコーンか、1週間前の湿気たポップコーンを渡しました。
すると、習慣のある人は、湿気たポップコーンでも、作りたてとほぼ同じだけ食べました。ところが同じ人たちでも、映画館ではなく会議室で映像を見たときは、湿気たポップコーンをあまり食べませんでした。また、映画館でも、利き手と反対の手で食べるようにすると、湿気たポップコーンを食べる量が減りました [2]。
おいしくないと分かっていても、「映画館」という文脈がそろうと、手が動く。食べ方をいつもと変えて自動の流れを崩すと、味に気づく。習慣が文脈に結びついていることが、よく分かる結果です。
QUIZ大学を移った学生の運動や新聞の習慣は、環境が変わってもそのまま続いた。答えを見る
×。状況の一部が同じときだけ続いた。
行動していた状況が変わると、習慣は合図を失って崩れた。たとえば誰かと一緒に新聞を読む状況が続いた人は、習慣も続いた。
転校したら、習慣が崩れた
大学を移った学生を、移る前と後で調べた研究があります。調べたのは、運動、新聞を読む、テレビを見るという3つの習慣です。
結果、これらの習慣が移ったあとも続いたのは、移った先でも、行動していた状況の一部が同じだったときだけでした。たとえば、前の大学でも新しい大学でも、誰かと一緒に新聞を読んでいた人は、その習慣が続きました。状況が変わると、習慣は合図を失って崩れ、行動はその時点での本人の意図に左右されるようになりました [3]。
引っ越しや転職のあとに、続いていた運動が止まってしまうのは、意志が弱くなったからではなく、行動を始めさせていた合図がなくなったからかもしれません。
習慣が崩れる時期は、変わるチャンスでもある
文脈が変わると習慣が崩れる。これは悪いことばかりではありません。
800人を対象にした研究では、環境にやさしい暮らし方を勧める働きかけを、最近引っ越した人と、そうでない人に行いました。働きかけの効果が見られたのは、引っ越したばかりの人でした。効果は小さいものの、統計的に意味のある差で、その「チャンスの時期」は引っ越しから約3か月続いたと報告されています [4]。
研究者たちはこれを「習慣の不連続」と呼んでいます。古い習慣の合図がなくなっている間は、新しいやり方を取り入れやすいということです。
新しい習慣は、文脈に結びつけてつくる
習慣が身につくまでの期間を調べた研究では、参加者は新しい行動を一つ決め、それを毎日の決まった合図(たとえば朝食のあと)に結びつけてくり返しました。自動的にできるようになるまでの期間は平均66日でしたが、人によって18〜254日と大きな差がありました [5]。この研究については「システムのないゴールは、動かない」にも書いています。
ここから言える、新しい習慣のつくり方は次のとおりです。
- 場所を決める:「家で」ではなく「玄関で」「机の右側で」まで決める
- 時間か、直前の行動を決める:「朝起きたら」より「コーヒーを入れたら」のように、毎日必ず起きる行動のあとにつなげる
- 同じ文脈でくり返す:場所や順番を毎回変えない
やめたい習慣は、文脈から崩す
やめたい習慣には、逆の考え方が使えます。
- 合図を取り除く:スマホを寝室に持ち込まない、お菓子を見える場所に置かない
- いつもの流れを崩す:ポップコーンの実験のように、手順や道具を変えるだけでも自動の流れが止まる
- 環境が変わる時期を使う:引っ越し、転職、異動のあとの数か月は、古い習慣の合図が弱まっている。やめたいことをやめ、始めたいことを始める時期にする
SNSを見る時間を減らした実験はこちらの記事、習慣と脳の仕組みは『習慣と脳の科学』の紹介に書いています。
まとめ
- 習慣は、行動そのものより、場所、時間、直前の行動といった文脈に結びついてできる
- 習慣のある人は、映画館では湿気たポップコーンでも食べ続けた。会議室や、反対の手で食べたときは減った
- 大学を移った学生の習慣は、状況の一部が同じときだけ続いた
- 引っ越し後の約3か月は、新しい行動を取り入れやすかった
- 新しい習慣は決まった文脈に結びつけ、やめたい習慣は文脈から崩す
参考文献
1. Wood, W., & Rünger, D. (2016). Psychology of habit. Annual Review of Psychology, 67, 289–314.
2. Neal, D. T., Wood, W., Wu, M., & Kurlander, D. (2011). The pull of the past: when do habits persist despite conflict with motives? Personality and Social Psychology Bulletin, 37(11), 1428–1437.
3. Wood, W., Tam, L., & Guerrero Witt, M. (2005). Changing circumstances, disrupting habits. Journal of Personality and Social Psychology, 88(6), 918–933.
4. Verplanken, B., & Roy, D. (2016). Empowering interventions to promote sustainable lifestyles: testing the habit discontinuity hypothesis in a field experiment. Journal of Environmental Psychology, 45, 127–134.
5. Lally, P., van Jaarsveld, C. H. M., Potts, H. W. W., & Wardle, J. (2010). How are habits formed: modelling habit formation in the real world. European Journal of Social Psychology, 40(6), 998–1009.
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