2026.10.08 / BODY / HORMONE

テストステロンを、研究だけで整理する。測り方、睡眠、体重、筋トレ、サプリ、補充療法まで

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テストステロンについては、「上げる方法」の情報があふれています。でも、その多くは出典がはっきりしません。この記事では、研究と診療の指針で確かめられることだけを使って、できるだけ詳しく整理します。

QUIZ健康な若い男性が1週間、1晩5時間未満の睡眠を続けると、昼間のテストステロンが10〜15%下がった。答えを見る

○。10人の小さな研究で。

平均24歳の男性10人の研究。寝不足のあと、昼間のテストステロンと「活力」の自己評価が下がっていた。

目次

テストステロンとは

テストステロンは、男性ではおもに精巣でつくられるホルモンです。脳の下垂体から出る信号(黄体形成ホルモン)を受けて分泌され、筋肉や骨、性機能、ひげや体毛、気分ややる気などに関わっています。女性の体でも少量つくられています。

血液の中のテストステロンの多くは、運び役のたんぱく質(SHBG など)とくっついて運ばれています。検査では、これらを全部合わせた総テストステロンと、くっついていない遊離テストステロンを測ることがあります。

測り方と「低い」の基準

テストステロンは1日の中で変わり、朝に高く、夕方に低くなります。30〜80歳の男性66人を調べた研究では、30〜40歳の男性で、夕方4時の値は朝8時より20〜25%低く、70歳でもその差は約10%ありました。夕方に低く出た人の中には、朝に測ると正常だった人もいました [1]。そのため、検査は朝に行うのが基本です。

米国内分泌学会の診療指針(2018年)は、テストステロンが低いことによる症状があり、朝の検査で、くり返し、はっきり低いときに、はじめて「性腺機能低下症」と診断するよう勧めています。1回の検査だけで決めません。健康で太っていない若い男性をもとにした基準の下限は、総テストステロンで264 ng/dLです [2]。

日本では、日本泌尿器科学会と日本メンズヘルス医学会の手引き(2022年)で、加齢にともなう男性ホルモンの低下(LOH症候群)の目安として、総テストステロン250 ng/dL未満、または遊離テストステロン7.5 pg/mL未満が示されています。症状があることが前提です [3]。

指針「低い」の目安前提
米国内分泌学会(2018)総テストステロン 264 ng/dL 未満症状があり、朝の検査でくり返し低い
日本(LOH症候群の手引き、2022)総テストステロン 250 ng/dL 未満、または遊離テストステロン 7.5 pg/mL 未満男性更年期の症状がある

年齢で下がる。世代でも下がっている

アメリカの健康な男性890人を長く追った研究では、年齢とともにテストステロンは下がり、総テストステロンが低い範囲に入る人は60歳以上で約20%、70歳以上で約30%、80歳以上で約50%でした [4]。

もう一つ意外な結果があります。ボストン周辺の男性1,532人を17年にわたって調べた研究では、同じ年齢で比べても、あとの時代の男性ほどテストステロンが低い傾向がありました。肥満の増加や記録された生活習慣では、この差を説明しきれなかったと報告されています [5]。ただし、地域が限られた研究です。

睡眠:1週間の寝不足で10〜15%

平均24歳の健康でやせ型の男性10人に、実験室で3晩たっぷり眠ったあと、8晩続けて1晩5時間未満の睡眠をとってもらった研究があります。寝不足のあと、昼間のテストステロンは10〜15%下がり、「活力」の自己評価も下がっていました [6]。

人数は10人と少なく、比べる対照群もありません。それでも、たった1週間で変わるというのは覚えておいていいことだと思います。寝不足が見た目に出る話は、「第一印象と寝不足」に書いています。

体重:減らすと上がる

肥満の男性の体重を減らした研究24本をまとめた分析では、体重が減ると、テストステロンは上がりました。上がり方は、食事で減らした場合より減量手術のほうが大きく、どの方法でも、減った体重が多いほど上がる傾向がありました [7]。

POINT

太っていて低い場合、いちばん確かな「上げ方」の候補は、体重を減らすことです。

QUIZ筋トレ直後にテストステロンを大きく上げた腕のほうが、15週間で筋肉が太くなった。答えを見る

×。差はなかった。

若い男性12人の実験。ホルモンを上げた条件と上げない条件で、筋肉の太さと力の増え方に差はなかった。

筋トレ:一時的な上昇は、筋肉を増やさなかった

「脚のトレーニングでテストステロンを上げると、腕の筋肉も増えやすい」という話を確かめた実験があります。若い男性12人が15週間、片腕はホルモンがほとんど上がらない条件で、もう片腕は脚の高強度トレーニングでホルモンを大きく上げた条件で鍛えました。

結果は、どちらの腕も、筋肉の太さと力の増え方に差がありませんでした [8]。トレーニング直後のホルモンの一時的な上昇は、筋肉を増やすうえで重要ではなさそうです。筋肉を増やすうえで大事なのは、ホルモンを上げることより、鍛える筋肉そのものに負荷をかけ、たんぱく質をとることです(プロテインの選び方)。

父親になると下がる

フィリピンの若い男性を約4.5年追った研究では、その間に父親になった男性は、テストステロンが大きく下がっていました。下がり方は、生まれたばかりの子どもがいる父親や、育児に多く関わる父親で大きかったと報告されています [9]。

研究者たちは、これを子育てに向いた体の変化の一つではないかと考えています。テストステロンは、体の状態だけでなく、生活の変化にも反応しているようです。

「テストステロンを上げる」サプリ

インターネットで見つかった「テストステロンを上げる」とうたうサプリ50製品を調べた研究では、90%が「テストステロンを上げる」と宣伝していました。含まれる成分は全部で109種類、1製品あたり平均8.3種類でした。著者らは、こうした宣伝の多くは研究で裏づけられていないと結論づけています [10]。

サプリを試す前に、睡眠と体重を見直すほうが、研究の裏づけがあります。

補充療法:誰が対象で、何に注意するか

テストステロンを薬で補う治療は、症状があり、検査でくり返し低い人が対象です。米国内分泌学会の指針は、近いうちに子どもを望む男性には勧めていません。外から補うと、精子をつくる働きが抑えられることがあるためです [2]。

心臓への影響については、2023年に大きな試験の結果が出ました。テストステロンが低く、心臓病がある、またはそのリスクが高い男性5,246人を、テストステロンと偽薬に分けた試験です。心筋梗塞や脳卒中などの起こりやすさは、テストステロン群7.0%、偽薬群7.3%で、増えていませんでした。一方で、心房細動(3.5%対2.4%)や肺塞栓症(0.9%対0.5%)はテストステロン群で多く見られました [11]。

この試験は製薬会社の資金で行われたもので、結果は「もともと低い人」についてのものです。研究者も、年をとった男性に広くテストステロンを処方する理由にはならない、と述べています。

まとめ:研究から言えること

疲れやすい、やる気が出ない、性欲が落ちたなどが続くときは、テストステロンだけでなく、うつや睡眠の問題など、ほかの原因もありえます。気になるときは、泌尿器科や内科で相談してください。

参考文献

1. Brambilla, D. J., Matsumoto, A. M., Araujo, A. B., & McKinlay, J. B. (2009). The effect of diurnal variation on clinical measurement of serum testosterone and other sex hormone levels in men. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 94(3), 907–913.

2. Bhasin, S., Brito, J. P., Cunningham, G. R., et al. (2018). Testosterone therapy in men with hypogonadism: An Endocrine Society clinical practice guideline. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 103(5), 1715–1744.

3. 日本泌尿器科学会・日本メンズヘルス医学会. 加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群)診療の手引き. 2022年.

4. Harman, S. M., Metter, E. J., Tobin, J. D., Pearson, J., & Blackman, M. R. (2001). Longitudinal effects of aging on serum total and free testosterone levels in healthy men. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 86(2), 724–731.

5. Travison, T. G., Araujo, A. B., O'Donnell, A. B., Kupelian, V., & McKinlay, J. B. (2007). A population-level decline in serum testosterone levels in American men. Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, 92(1), 196–202.

6. Leproult, R., & Van Cauter, E. (2011). Effect of 1 week of sleep restriction on testosterone levels in young healthy men. JAMA, 305(21), 2173–2174.

7. Corona, G., Rastrelli, G., Monami, M., et al. (2013). Body weight loss reverts obesity-associated hypogonadotropic hypogonadism: a systematic review and meta-analysis. European Journal of Endocrinology, 168(6), 829–843.

8. West, D. W. D., Burd, N. A., Tang, J. E., et al. (2010). Elevations in ostensibly anabolic hormones with resistance exercise enhance neither training-induced muscle hypertrophy nor strength of the elbow flexors. Journal of Applied Physiology, 108(1), 60–67.

9. Gettler, L. T., McDade, T. W., Feranil, A. B., & Kuzawa, C. W. (2011). Longitudinal evidence that fatherhood decreases testosterone in human males. PNAS, 108(39), 16194–16199.

10. Clemesha, C. G., Thaker, H., & Samplaski, M. K. (2020). 'Testosterone boosting' supplements composition and claims are not supported by the academic literature. World Journal of Men's Health, 38(1), 115–122.

11. Lincoff, A. M., Bhasin, S., Flevaris, P., et al. (2023). Cardiovascular safety of testosterone-replacement therapy. New England Journal of Medicine, 389(2), 107–117.

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