2026.10.08 / BODY / HORMONE

チロシンとアンドロゲン。ドーパミンの材料と男性ホルモンは、どうつながっているのか

約6分で読めます(目安)

チロシンは「やる気の材料」、アンドロゲンは「男性ホルモン」。どちらもサプリや筋トレの話でよく出てきますが、体の中ではどうつながっているのでしょうか。先に答えを言うと、2つは材料も通り道も別です。

QUIZチロシンは、テストステロンの材料になるアミノ酸だ。答えを見る

×。テストステロンの材料はコレステロール。

チロシンからできるのはドーパミンやノルアドレナリン。テストステロンなどのアンドロゲンはコレステロールからつくられる。

目次

チロシンとは何か:ドーパミンの材料

チロシンは、たんぱく質をつくるアミノ酸の一つで、肉や魚、卵、大豆製品などに含まれています。体の中でチロシンは、チロシン→L-ドーパ→ドーパミン→ノルアドレナリン→アドレナリンの順に変えられていきます。最初の「チロシン→L-ドーパ」を担う酵素(チロシン水酸化酵素)が、この流れ全体の速さを決める関所になっています [1]。

この酵素は、できたドーパミンなどによってブレーキがかかる仕組みも持っています [1]。材料を増やせば、そのぶんドーパミンが増える、という単純な話ではありません。

アンドロゲンとは何か:コレステロールからつくられる

アンドロゲンは、テストステロンなどの「男性ホルモン」をまとめた呼び方です。女性の体でもつくられています。

アンドロゲンを含むステロイドホルモンは、コレステロールからつくられます [2]。代表的な流れは次のとおりです。

コレステロール → … → DHEA → アンドロステンジオン → テストステロン → ジヒドロテストステロン(DHT)

DHEAは、おもに副腎でつくられるアンドロゲンの「もと」で、それ自体の働きは弱いとされています [3]。DHEAについては別の記事に詳しく書いています。

2つの通り道は、別々

チロシンの流れアンドロゲンの流れ
材料アミノ酸(チロシン)コレステロール
できるものドーパミン、ノルアドレナリン、アドレナリンDHEA、テストステロン、DHT など
関所になる酵素チロシン水酸化酵素ステロイドをつくる複数の酵素

つまり、チロシンはテストステロンの材料ではありません。チロシンからできるのはドーパミンなどで、テストステロンはコレステロールからできます [1] [2]。

QUIZ冷たい水に浸かる実験で、チロシンをとると、寒さで落ちた作業記憶の成績が改善した。答えを見る

○。19人の小さな実験で。

短時間のストレスや頭を使う負担が大きい場面で、チロシンは認知の成績を保つ可能性がある。ただし研究は小規模で短期。

チロシンのサプリで分かっていること

チロシンのサプリについての研究をまとめた総説では、チロシンは、短時間のストレスがかかる場面や、頭を使う負担が大きい場面で、認知の成績を保つのに役立つ可能性があるとされています。一方で、運動の成績を上げる効果はほとんど期待できず、病気の治療に使える場面も限られるとされています [4]。

たとえば、19人が冷たい水に浸かる実験では、寒さで落ちた作業記憶(短い間の記憶)の成績が、チロシンをとった条件では改善していました [5]。

ただし、どれも短期間の、少人数の研究です。総説の著者らも、効果があるのはドーパミンなどがもともと正常に働いていて、一時的に足りなくなった場面だけだろうとしています [4]。

チロシンでテストステロンは上がるのか

「チロシンでテストステロンが上がる」という話を見かけることがあります。でも、上で見たとおり、チロシンとテストステロンは材料も通り道も別です。僕が調べた範囲では、人でチロシンのサプリがテストステロンを上げることを確かめた試験は見つかりませんでした。動物の研究はありますが、それをそのまま人に当てはめることはできません。

テストステロンについて研究で分かっていることは、テストステロンの記事にまとめています。睡眠と体重のほうが、研究の裏づけがあります。

まとめ

持病がある人、薬を飲んでいる人がサプリを試すときは、医師や薬剤師に相談してください。

参考文献

1. Daubner, S. C., Le, T., & Wang, S. (2011). Tyrosine hydroxylase and regulation of dopamine synthesis. Archives of Biochemistry and Biophysics, 508(1), 1–12.

2. Miller, W. L., & Auchus, R. J. (2011). The molecular biology, biochemistry, and physiology of human steroidogenesis and its disorders. Endocrine Reviews, 32(1), 81–151.

3. Turcu, A. F., Rege, J., Auchus, R. J., & Rainey, W. E. (2020). 11-Oxygenated androgens in health and disease. Nature Reviews Endocrinology, 16(5), 284–296.

4. Jongkees, B. J., Hommel, B., Kühn, S., & Colzato, L. S. (2015). Effect of tyrosine supplementation on clinical and healthy populations under stress or cognitive demands—A review. Journal of Psychiatric Research, 70, 50–57.

5. Mahoney, C. R., Castellani, J., Kramer, F. M., Young, A., & Lieberman, H. R. (2007). Tyrosine supplementation mitigates working memory decrements during cold exposure. Physiology & Behavior, 92(4), 575–582.

もう1問 ○×クイズ