スロットがやめられないのは、なぜか。脳と仕組みから見る依存のメカニズム
約6分で読めます(目安)
スロットは、なぜ「あと1回」がやめられないのか。意志が弱いから、だけでは説明できません。そこには、行動が続きやすくなる仕組みがいくつも重なっています。
QUIZドーパミン神経の活動は、当たる確率が50%のとき、待ち時間にいちばん高まった。答えを見る
○。いちばん「分からない」とき。
サルの研究。当たるかどうか分からない待ち時間に、ドーパミン神経の活動がだんだん高まり、確率50%で最も大きかった。
目次
スロットは「ときどき当たる」から、やめにくい
行動の研究では、ごほうびの出方を「強化スケジュール」と呼びます。毎回もらえる、決まった回数ごとにもらえる、何回目でもらえるか分からない、などです。このうち何回目に当たるか分からない出方(変動比率スケジュール)は、行動がもっとも続きやすく、やめにくいことが、動物の実験から知られています [1]。
スロットは、まさにこの出方です。次の1回で当たるかもしれない。だから、手が止まりません。
ドーパミンは「当たるか分からない」ときに高まる
サルにさまざまな確率でジュースが出る合図を見せた研究では、ドーパミンをつくる神経細胞は、合図のあと、ごほうびが出るかどうかが決まるまでの間、だんだん活動を強めました。この高まりは、当たる確率が50%、つまりいちばん「分からない」ときに大きくなりました [2]。
POINT
ドーパミンは「当たった」ときだけでなく、「当たるか分からない」待ち時間にも働いている。
ドーパミンが「快感」より「欲しい」に近い、という話はD2受容体の記事に書きました。結果が分からないあいだの「欲しい」が、次の1回を回させます。
QUIZスロットの「惜しいハズレ」は不快なので、続けたい気持ちを弱める。答えを見る
×。続けたい気持ちを強めた。
不快に感じたのに、続けたい気持ちは強まり、当たりで働く報酬系の部位も反応していた(15人の研究)。
惜しいハズレは、当たりに近い反応を起こす
簡単なスロットを使った脳画像の研究では、絵柄が当たりの位置から1つずれて止まる「惜しいハズレ」は、本人にとっては普通のハズレより不快だったにもかかわらず、「もっと続けたい」という気持ちを強めました。脳では、当たりのときに働く報酬に関わる部位(線条体や島皮質)が反応していました。この効果は、自分で賭ける絵柄を選べる条件のときに見られました [3]。
この研究の参加者は15人で、ふだんギャンブルをする人ではありません。それでも、「惜しかった」が次を回させる仕組みが、脳の反応として見えたのは大事な結果です。
負けているのに、勝ったように感じる
何本ものラインに賭ける今どきのスロットでは、賭けた額より少ない払い戻しでも、当たりと同じ音と光の演出が出ることがあります。実際には負けているのに、勝ったように見える。これは「勝ちに見せかけた負け」と呼ばれています。
初心者40人の汗の反応(皮膚の電気反応)を測った研究では、この「勝ちに見せかけた負け」のあとの反応は、本当の勝ちのあととほぼ同じくらい高く、普通の負けより大きくなっていました [4]。
日本で多いのはパチンコ・パチスロ
日本で2020年度に行われた全国調査(18〜74歳)では、過去1年でギャンブル等への依存が疑われる人の割合は2.2%(男性3.7%、女性0.7%)でした。これは診断ではなく、質問票でのスクリーニングの結果です。過去1年にいちばんお金を使ったギャンブルは、パチンコ・パチスロでした [5]。
アメリカ精神医学会の診断基準(DSM-5、2013年)では、ギャンブル障害は、アルコールや薬物と同じ「物質関連障害および嗜癖性障害」の章に移されました。物質を使わない依存として、初めてこの章に入ったものです [6]。
やめたいときに知っておきたいこと
- スロットがやめにくいのは、意志の弱さだけではなく、「いつ当たるか分からない」「惜しい」「勝ったように見える」という、行動が続きやすい仕組みが重なっているから
- 「次こそ当たる」「惜しかったから流れが来ている」と感じたら、それは機械の仕組みが起こしている反応だと思い出す
- 使う金額と時間を先に決め、現金やカードを持ち歩かない
- やめたいのにやめられない、借金をしてしまうときは、一人で抱えずに相談する。各都道府県の精神保健福祉センターなどで相談を受けつけています
脳の「欲しい」の仕組みについては、D2受容体とMAO酵素の記事、『快感回路』の紹介もあわせてどうぞ。
参考文献
1. Ferster, C. B., & Skinner, B. F. (1957). Schedules of Reinforcement. Appleton-Century-Crofts.
2. Fiorillo, C. D., Tobler, P. N., & Schultz, W. (2003). Discrete coding of reward probability and uncertainty by dopamine neurons. Science, 299(5614), 1898–1902.
3. Clark, L., Lawrence, A. J., Astley-Jones, F., & Gray, N. (2009). Gambling near-misses enhance motivation to gamble and recruit win-related brain circuitry. Neuron, 61(3), 481–490.
4. Dixon, M. J., Harrigan, K. A., Sandhu, R., Collins, K., & Fugelsang, J. A. (2010). Losses disguised as wins in modern multi-line video slot machines. Addiction, 105(10), 1819–1824.
5. 久里浜医療センター. 令和2年度 依存症に関する調査研究事業「ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」.
6. Rash, C. J., Weinstock, J., & Van Patten, R. (2016). A review of gambling disorder and substance use disorders. Substance Abuse and Rehabilitation, 7, 3–13.
もう1問 ○×クイズ