2026.10.09 / BODY / BODY CLOCK

「何時間寝たか」より「毎日同じ時間か」。体内時計は、光と食事と運動で動く

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「何時間眠れたか」は、多くの人が気にします。でも、6万人の腕時計型のデータを調べた研究では、それ以上に大事そうなものが見えてきました。毎日、同じような時間に寝て起きているかどうかです。

QUIZ約6万人の睡眠を記録した研究で、その後の死亡リスクとより強く結びついていたのは? A.睡眠時間の長さ B.寝て起きる時間の規則正しさ答えを見る

B. 規則正しさ。

睡眠がいちばん不規則なグループと比べて、規則正しいグループでは死亡リスクが20〜48%低くなっていました。睡眠時間の長さよりも、強い結びつきでした。

規則正しさが大事なのは、体の中に「時計」があるからだと考えられています。この記事では、その時計が何で動くのかを、光・食事・運動の実験から確かめます。

目次

6万人のデータが示したこと

イギリスの大規模な健康調査(UKバイオバンク)で、約6万1千人が手首に活動量計を1週間つけました。その記録から、毎日どれくらい同じ時間に寝て起きているかを点数にし、その後を最長7.8年追いかけた研究があります [1]。

いちばん不規則なグループと比べて、規則正しいグループでは、死亡リスクが20〜48%低くなっていました。がんによる死亡、心臓や代謝の病気による死亡でも、同じ向きの結果でした。

そして、この規則正しさは、睡眠時間の長さよりも、死亡リスクと強く結びついていました。年齢や性別、生活習慣、持病などをそろえて比べても、同じでした。

POINT

「何時間寝たか」と同じくらい、あるいはそれ以上に、「毎日同じ時間か」が大事なのかもしれない。

ただし、これは睡眠時間がどうでもいいという意味ではありません。そして、この研究は観察したもので、「規則正しくすれば長生きできる」と確かめたわけではありません。それでも、注目する価値のある結果です。

脳の奥にある「親時計」

私たちの体は、約24時間のリズムで、眠気や体温、ホルモンの量を変えています。このリズムをまとめているのが、脳の視床下部にある「視交叉上核(しこうさじょうかく)」です [2][3]。

目のすぐ奥にある米粒ほどの大きさの部分で、約2万個の神経細胞でできています。ここが「親時計」となって、体じゅうの細胞にある小さな時計たちのリズムをそろえています。

親時計は、目から入る光の情報を受け取って、毎日少しずつ時刻を合わせ直しています。網膜には、光を感じて視交叉上核へ知らせる特別な細胞があるからです。

体内時計がずれるのは、この「時刻合わせ」がうまくいかないときです。では、何が時刻合わせの合図になるのでしょうか。

光:1週間のキャンプで、時計は約2時間早まった

アメリカ・コロラド州の研究では、8人の大人が、ふだんの生活を1週間送ったあと、電気の明かりも懐中電灯もない山でキャンプを1週間しました [4]。

ふだんの生活では、昼に浴びる日光が少なく、日が沈んだあとに電気の明かりを浴びていました。その結果、体内時計は太陽より遅れていました。キャンプで自然の光だけになると、体の「夜」の始まりが日没のころにそろい、体内時計は約2時間早まっていました。

もともと夜型だった人ほど、大きく早まっていました。夜型の人の「遅れ」の一部は、明かりの浴び方がつくっているのかもしれません。

朝に光を浴び、夜は明かりを控えめにする。部屋の光が気になるなら、耳栓とアイマスクの選び方も参考にしてください。夜のスマホの光については、ブルーライトの記事に書きました。

食事:食べる時間をずらすと、血糖のリズムがずれた

光が親時計の合図なら、食事は体の「子時計」の合図になるようです。

イギリスの実験では、若い男性10人が、起きてから30分後に朝食をとる生活から、5時間半後にとる生活に切り替え、昼食と夕食も同じく5時間ずつ遅らせました [5]。6日後に体のリズムを調べると、こうなっていました。

つまり、食事の時間をずらすと、親時計はそのままで、血糖などの「体の時計」だけがずれていきました。親時計と体の時計がばらばらになる、ということです。

夕食の時間が日によって大きく違う人は、体の中でこのずれが毎日起きているのかもしれません。ただ、10人の小さな実験なので、確かなことを言うには、もっと研究が必要です。

運動:朝と午後は早める、夜は遅らせる

運動も、体内時計を動かします。99人の大人に、1日のうちの決まった時間に、中くらいの強さの運動(トレッドミルで60分)を3日続けてもらい、時計がどれだけずれるかを調べた研究があります [6]。

運動した時間体内時計
朝7時早まった
午後1時〜4時早まった
夜7時〜10時遅れた
朝10時、深夜1時〜4時ほとんど変わらなかった

若い人と高齢の人で、ずれ方に差はありませんでした。夜型を少し戻したいなら、運動は夜遅くより、朝か午後のほうが合っているのかもしれません。

どこまで言えるか

6万人の研究は、規則正しさと死亡リスクの「結びつき」を見たもので、原因と結果までは分かりません。参加者の多くは中高年のイギリスの人で、睡眠の記録も1週間分でした。

光・食事・運動の実験は、どれも数人から100人ほどの、短い期間の実験です。体内時計の早い・遅いには人による差もあります。夜勤など生活の時間を自分で決められない人は、同じようにはいきません。

それでも、「光は親時計を、食事は体の時計を、運動はその両方を動かしうる」という方向は、別々の実験でそろっていました。

まとめ

何時間眠るかを気にする前に、毎日だいたい同じ時間に起きて、朝に光を浴び、食事の時間をそろえる。体内時計にとっては、そのほうが分かりやすい合図なのかもしれません。週末の寝だめで取り返せるかは「寝だめ」の記事に、朝型・夜型の違いはクロノタイプの記事に書きました。

参考文献

1. Windred DP, et al. (2024). Sleep regularity is a stronger predictor of mortality risk than sleep duration: a prospective cohort study. Sleep, 47(1), zsad253. doi:10.1093/sleep/zsad253

2. National Institute of General Medical Sciences (NIGMS). Circadian Rhythms(体内時計と視交叉上核についての解説・図)

3. Neuroanatomy, Nucleus Suprachiasmatic. StatPearls. NCBI Bookshelf (NBK546664)

4. Wright KP Jr, et al. (2013). Entrainment of the human circadian clock to the natural light-dark cycle. Current Biology, 23(16), 1554–1558. doi:10.1016/j.cub.2013.06.039

5. Wehrens SMT, et al. (2017). Meal timing regulates the human circadian system. Current Biology, 27(12), 1768–1775. doi:10.1016/j.cub.2017.04.059

6. Youngstedt SD, Elliott JA, Kripke DF. (2019). Human circadian phase–response curves for exercise. The Journal of Physiology, 597(8), 2253–2268. doi:10.1113/JP276943

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